利用者本位のサービスのための情報連携と法準則 : 要介護認定等情報提供制度の課題(第1報告,分科会A(社会法研究会),分科会,2004年(第109回)学術大会)
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概要
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本報告は、利用者の立場に立った保健・医療・福祉の連携という視点から、情報を共有する仕組みと準則を検討するという目的のもと、その一部として要介護認定等情報提供制度を取り上げた。その理山は第一に、利用者に関する情報は介護支援専門員、介護施設、居宅事業者など、サービス計画の作成・実施に係る当事者によって広く収集されているが、要介護認定業務により収集される利用者に関する情報は膨大かつ重要で、一括管理されていることと、第二に、すでに定着しつつある自治体による「要介護認定等情報提供制度」(以下、「当該制度」)が、目的拘束の原則に関連して本人同意を前提としているとはいえ、規範的な問題も含めたいくつかの問題を抱えていることにある。そこで、まず、福祉サービス利用者に関する情報の特性を踏まえた上で、当該情報提供制度の法的根拠及び性質を明らかにし、当該制度の実施状況の概観、各自治体の比較検討を行った上で、当該制度の問題点を検討するという形で展開した。介護保険法や社会福祉法の情報提供規定は、当該制度の直接的根拠とすることは困難であるが、各法の情報提供重視の理念を受けて、要介護認定等の情報提供制度要綱が定められ、行政保有の情報が指定居宅介護支援事業者らに提供されるという構造と理解できる。これは同時に個人情報保護法制を踏まえたものである必要がある。ただ、要綱であることによる権利性の問題のみならず、制度未実施自治体、要綱によらず運用として実施している自治体などがあり、必ずしも成熟した制度とはなっていない。本報告では、各自治体の要綱の比較検討から、(1)申請資恪者としての「家族」「親族」、(2)介護サービス事業者にも情報提供を認めるか否か、(3)本人に同意能力がない場合の対応、(4)申請主義と同意の有効性の関係、(5)同意を得る手役、(6)主治医の同意は必要か、(7)条例化の必要性の7点を当該制度の問題点として取り上げ考察した。最後に、事業者間情報連携にかかる法準則のあり方について3点指摘した。第1点は、介護保険法及び関連規則上の本人の包括的同意、2点目に、新たに成立した個人情報保護法と介護保険において保有される情報との関係、3点目に、守秘規定と第三者提供の関係についてである。本報告では、利用者本位のサービスのための情報連携と法準則を考えるために、その端緒として要介護認定等情報提供制度を取り上げたわけであるが、連携のあらゆる関係軸及び場面、内容等における法準則を考察し、総則的準則の確立について今後さらに検討していくこととしたい。
- 2006-02-15