わが国企業における女性従業員比率と企業業績の関係 : 先行研究成果の比較・検討を中心として(自由論題)
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概要
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「女性労働者を多く雇用すれば企業の業績は向上する」といったテーマは,女性の社会進出の意義や企業の経営戦略や社会的責任という観点からも重要である。しかしこれらの企業の業績が実際に向上しているのか,また向上しているとすれば女性の積極的な活用がその一因を担っているかは,未だ明らかにはなっていない。女性従業員比率と企業業績に関する代表的な研究者たちは,ベッカー(Becker, G.S.)の「使用者差別仮説」を敷衍して上記の仮説を検証している。使用者差別仮説は,本来米国における黒人労働者に対する差別的扱いを取り上げたものであるが,黒人を女性に置き換え,女性は高い限界生産性を持っているので,多く雇う企業ほど業績が高まるはずであるというものであるという論を展開している。一方,経済産業省が2003年に発表した男女共同参画研究会報告では,「女性比率は見かけ上の要因であって,真の要因は何らかの企業特性である」として,経営者・幹部の意識,社是,男女を区別しないという伝統といった企業風土,人事・労務管理の仕組みなど様々なものを挙げている。そこで本報告では,先行研究の史的展開を概説するとともに,その比較検討・吟味を通じて女性比率と企業業績の関係について整理し,その見解に一定の結論を出すことを目的としている。またワーク・ライフ・バランス施策との関連でも考察も加えることにする。
- 2012-11-03