森林環境保全をめぐる制度設計と実態 : 神奈川県「自然保護奨励金」に関する事例研究
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概要
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1960年代、林業収益率は減少傾向へと転じ、管理の行き届かない人工林が拡大した。人工林の多面的機能の劣化が懸念され、森林環境を保全するための研究が求められている。そこで1974年度に神奈川県で導入された「自然保護奨励金」を検討した。県は地域制緑地の地権者に1haあたり約1万2,000円の奨励金を毎年交付してきた。本稿では奨励金が受給者の財務構造に与えた影響を把握し、それが森林環境の保全にどのような意味を持ってきたかについて考察した。考察対象として神奈川県相模原市緑区青根地区の財産区、造林組合、生産森林組合に着目した。この3団体は、1981年度から2003年度まで主伐せず、主な収入は不動産売払や奨励金であった。30年間、3団体に交付された奨励金総額のうち林業費として支出された割合は約10%であった。当該地域については、奨励金が森林の維持管理に果たした役割は限定的であった。
- 2012-07-20