アメリカにおける派遣看護師の雇用と賃金
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概要
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アメリカにおいては,1960年代後半から看護師の派遣労働が広く普及してきた。本論は,現地でのインタビュー調査からえた知見より,アメリカの派遣看護師制度とその実態,および病院経営における派遣看護師活用の持つ意味を考察することをテーマとする。論点を整理すると,第一に,多くの病院は,離職率の高い部門において,正規雇用の看護師を育成する代わりに,派遣看護師を用いて短期的にしのいでいる状態である。第二に,派遣看護師は非常に高い賃率が適用されているということである。第三に,派遣看護師の高賃率は,市場原理の影響を強く受けることによってもたらされたものであるということである。すなわち,アメリカの派遣看護師という存在が含む問題点は,彼女たちの労働条件にあるのではない。それよりもむしろ,派遣看護師の使用が,1990年代に進められた病院経営の「合理化」戦略にともなう,短期志向の人事労務管理を促進させたというところに存在する。病院が短期的な視野でのみ看護師の人事労務管理を行い,内部で有能な人材を育成することを軽視するとすればそれによって医療の質は低下し,広く国民が受ける医療にも影響を与える可能性を有しているであろう。
- 2010-02-25