自由刑執行の場所としての刑務所の展開(刑罰としての拘禁の意味を問い返す)
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概要
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本論稿では,現在のように自由刑が多用されるに至った歴史的な事情が考察される.近代市民社会の成立以降,自由刑が多用されるに至ったのは,7つの事情が存在したためとして,その事情が指摘される.次いで,現在の我が国で,自由刑の執行場所となっている刑務所について,その人的組織の構造の問題点が分析される.つまり,矯正行政の責任者のポスト,ライン系列の矯正職員とスタッフとしての専門職員の関係,現場の矯正職員の地位と役割,受刑者をめぐる人間関係,PFI刑務所における人的組織の構造に関して,問題点が検討される.最後に,結びに代えて,刑務所は福祉的機能を果たすべきかという問いが検討される.現在の刑務所は,潜在的機能として,多くの高齢受刑者に医療と保護を提供するという機能を担うようになっている福祉機能の充実は望ましいことではあるが,本格的にその機能を担うべきであろうか.もし一般社会における保護と医療のサービスの水準を上回るようになれば,多くの生活困窮者,とくに,高齢者が,自由を拘束されることを覚悟の上で,刑務所における快適な生活を望んで,軽い犯罪を犯して刑務所に入ってくることになろう.そのようになれば,刑務所は,本来の顕在的機能を果たすのに,支障をきたすことになろう.
- 2012-10-31