学習方略がPISA型学力に与える影響 : 階層による方略の違いに着目して
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概要
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本稿の目的は,高校生の数学の学習に注目して,学習方略と学力と階層の関係を明らかにすることである。その際PISA2003のデータを分析に用いる。定着確認方略・応用関連方略・手順暗記方略という三つの学習方略について分析を行ったところ,以下の三つの知見が得られた。第一に,学習方略の使用には階層差が見られるが,学習時間の階層差ほど顕著ではない。すなわち,学習方略の使用はそれほど階層固定的ではない。第二に,定着確認方略と手順暗記方略は学力に正の効果であるが,応用関連方略は負の効果である。これは「応用」力としてのPISA型学力のイメージに反する。第三に,学習方略の効果にはかなりの階層差が見られる。具体的には,定着確認方略は階層下位の生徒に対して効果が大きく,応用関連方略は階層下位の生徒に対して大きな負の効果をもたらす。応用関連方略が学力向上につながらない理由は,これまでの学習経験から,方略を有効活用できていないからかもしれない。本研究の実践的インプリケーションとしては,学校教育や教育行政は,生徒の学習時間の確保を推進するだけでなく,生徒の学習方略(特に定着確認方略や手順暗記方略)の確立を推進する必要があることが挙げられる。学問的インプリケーションとしては,教育社会学において,これまで研究対象としてこなかった学習方略に注目する必要があることが挙げられる。
- 日本教育社会学会の論文
- 2010-06-30
著者
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