地理的・社会的・技術的近接性と知識のスピルオーバー : 特許間引用データを用いた定量分析
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概要
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本稿は研究者間の地理的、社会的、技術的近接性とそれらの相互作用が知識のスピルオーバーのパターンに対してどのような影響を及ぼすのかを検証する。米国特許商標庁に登録された300万件を超える実用特許間のペアとその発明者に関するデータを用いた分析の結果、地理的近接性、社会的近接性、および技術的近接性はそれぞれ知識のスピルオーバーを促進する効果を持つものの、各近接性の相互作用に着目すると従来の研究とは異なるスピルオーバーのパターンが見出された。(1)技術的近接性は、社会的近接性のスピルオーバーに対する促進効果を大幅に低下させる。(2)社会的近接性は、地理的近接性が持つスピルオーバーの促進効果を低下させる。(3)地理的近接性は、技術的近接性が持つスピルオーバーの促進効果を低下させる。これらの分析結果は知識のスピルオーバーに関する研究に対して、地理的、社会的、技術的近接性のスピルオーバーに対する促進効果の代替性という新たな知見を加える。同時に、それぞれの近接性を別個に見つめるだけでは多国籍企業の知識移転や海外研究開発拠点の立地選択、そして知識創造を念頭に置いた地域の産業振興政策において適切な意思決定を行えない可能性を示唆するものである。
- 2012-10-10