片麻痺者に配慮した衣服設計指針に関する研究1 : 片麻痺者の左右身体寸法の差異に見る体型特性と衣服設計要因の関係(ファッションデザイン)
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概要
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本研究の最終目的は,今後増加の一途を辿ると予想される片麻痺者を対象に,衣服設計指針を導き出し,それを彼らが快適に思い感じるデザインに活用することである.したがって,本研究は連報とし,本論では,まず左右寸法の有意差から片麻痺者の体型特性を示し,彼らの衣服設計に関わる衣服設計要因を抽出する.次報では,片麻痺者の立位・歩行特性に適応する衣服形態要素(シルエット・襟ぐり・袖)を抽出する.そして最後に,片麻痺者の着脱行為調査から彼らに適応した衣服設計要因や副資材を抽出し,それらを総括し、デザイン活用する視点を明らかにする.本論の研究方法として,片麻痺者59人に対しマルチン計測法を用い人体計測を行った.そして片麻痺者の麻痺症状・体型の関係と衣服設計の関わりを勘案して,自然型姿勢(患側肩峰高の計測値が健側よりも低い被験者)・補正型姿勢(患側肩峰高の計測値が健側よりも高い被験者)の左右差に着目し,左右27項目についてt検定を用い考察を行った.その結果,自然型・補正型姿勢の両者に,「肩峰高」「乳頭高」「大腿囲」「上腕囲」「肩峰高-ウエスト高」の5項目の有意差があらわれた.自然型姿勢では,「肩峰高」「乳頭高」「ウエスト高」「外果端高」「大腿囲」「下腿最大囲」「下腿最小囲」「上腕囲」「肘囲」「肩傾斜」「前丈+後丈」「肩峰高-ウエスト高」の12項目に,自然型姿勢のみには,「ウエスト高」「外果端高」「下腿最大囲」「下腿最小囲」「肘囲」「肩傾斜」「前丈+後丈」の7項目に有意差があらわれた.補正型姿勢では,「肩峰高」「乳頭高」「前丈」「大腿囲」「腕付根囲」「上腕囲」「前丈-乳下がり」「肩峰高-ウエスト高」の8項目に,補正型姿勢のみには,「腕付根囲」「前丈」「前丈-乳下がり」の3項目に有意差があらわれた.このことから,片麻痺者の体型特性として,体幹部の高さ項目に左右有意差が見られ,身体が傾斜している状態が伺えた.上肢・下肢の回り寸法に左右有意差が見られるのは,身体のバランスを取るために,健側(健常側)の筋力が発達し周囲長に影響したと考える.また自然型・補正型姿勢固有の特性もあらわれ,自然型姿勢の方が高さ・回り寸法・傾斜角と左右有意差が生じている項目が多いことが明らかになった.患側が高い補正型姿勢では,「腕付根囲」「前丈」「前丈-乳下がり」も影響を受け,患側が高くなっていた.本研究において明らかになった片麻痺者の体型特性は,彼らの衣服設計に関与する着丈,袖丈,ズボン丈などの丈に関わる要因,ズボン幅(渡り幅),袖幅など幅に関わる要因,襟ぐりの形,ダーツの長さや分量を決定する重要な要因と関わり,今後,留意する項目となる.
- 2012-02-01
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