会話における見解交渉と主張態度の調整(<特集>相互作用のマルチモーダル分析)
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概要
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本稿では,相互作用のマルチモダリティを例証する1つの現象として,見解表明ターンにおいて,話し手が,見解の核心を明示した直後に発話を中断し,聞き手の反応を引き出す「交渉空間」を作る手続きを記述する.さらに,交渉空間内での聞き手の反応が,発話再開後のデザインにどう反映されているのかも検証する.交渉空間内で聞き手から不確定な返答が得られた場合,断定を避けるモダリティ表現とその他の資源の組み合わせにより,発話末尾で主張態度を弱めるデザインがなされていた.また,話し手が聞き手の返答を待たずに見解内容を修正した例では,交渉空間の形成で発話の進行を遅らせたことにより,修正した発話の完結前に聞き手の賛同を得ることができた.その結果,話し手は断定的な表現で発話を終わらせていた.本稿の検証結果から,核心表現の直後での交渉空間の形成が,発話完結前に見解内容や主張態度を微妙に調整する話し手の手段となっていることを明らかにする.
- 社会言語科学会の論文
- 2011-09-30