相互行為における発話の効力を再考する : 社会による限定と参与者による決定
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概要
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語用論の中核を成す伝統的理論としての発話行為理論は,言語が何かを陳述するだけでなく,「行為としての効力」を持つものであるとする(Austin, 1962).当該の理論に対しては,後世の研究により様々な批評が加えられてきたが,中でもしきりに議論の的とされてきたのは,語用論における旧套の理論が発語行為動詞のような言語形式と語用論的意味や効力との関連づけに深く傾倒し,相互行為の流れを含む社会的なコンテクストから切り離した形で発話を捉えてきたことの問題点である.本論の着目するMey (2001)は,旧来の理論が実際の言語使用の場から離れ,ほどよく純粋化されたレベルで論じられていることに疑問を呈し,状況的コンテクストから自立した参与者が効力を持った言葉を受け渡すという着想そのものを批判した.そして,個々人の発話はすべてその場のコンテクストに状況づけられたものであることから,「発話行為は,それがその一部であるような活動を取り巻く状況全体の中で」考えられるべきであると主張した(小山訳p.147).本稿は,そのような視野の拡張を行ったMey (2001)の立場を基本的に支持しながらも,「社会」と「参与者」との関係性をめぐる議論に関しては再考・補足の余地を見出し,構成論的アプローチに基づく相互行為分析的視点からの検証を試みる.
- 2011-03-31