東アジアにおける資本主義の形成 : 日本帝国の歴史的性格(パネル(1)東アジアにおける資本主義の形成-帝国に依存した経済発展,第78回全国大会小特集)
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概要
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本稿は,20世紀前半に日本を中心とした東アジアが,1つの主権によって統合された市場関係に基づく資本主義として発展してきたという認識のもと,従来一般的につかわれてきている「日本資本主義」ではなく,「東アジア資本主義」という概念規定を提起する。まず東アジア地域の貿易の特異な発展を数量的に確認する。特に,日本が世界市場に最終消費財を輸出すると同時に,周辺アジア地域との間に特異な貿易関係を結んだ過程を検討する。次に,日本の工業製品輸出を支えた植民地農業の意義を明らかにする。植民地からの食料品輸入による日本の外貨節約効果を確認し,それを可能にした植民地における農業政策,商業機構,小農径営等について論じる。最後に,帝国レベルでの資本・賃労働関係の形成と帝国内における労働力移動の検討から,日本内地から植民地への資本主義的生産様式の移植について論じる。以上を通じて,日本および各植民地は当該地域の自然的・社会的な条件に規定されつつも,帝国として一体的に資本主義を形成していたことを示す。
- 2010-11-25