20世紀前半の衣料品部門産業化と中規模仕立業 : 兵庫県姫路市藤本仕立店の事例から
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概要
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最終消費財としての衣料品は19世紀末に産業化の兆しをみせ,20世紀最初の四半世紀の日本では,メリヤス業,仕立業,裁縫業,帽子業,足袋業など,ひろく衣料品産業と呼ばれる種々の職業が各種統計書に掲載されはじめた。衣料品部門の産業化に伴って導入されたミシンは,設置の自由度が高いゆえに,一方ではその集中的設置により少品種に特化した大規模工場が存在し,他方では職工数が5名にも満たない工場・家庭が無数に展開した。その時期,衣料品部門は織物業と同様に工場内分業や地域内分業などをもとに重層的な生産組織を備えたのである。本稿の課題は,衣料品部門の産業化に対し具体性を与えることにある。20世紀前半の衣料品部門をトータルに扱った研究は管見の限り見当たらず断片的な分析にとどまるのが現状である。このような状況を念頭におき,本稿では,まず,20世紀最初の四半世紀を中心に,工場規模を軸とした衣料品産業の類型化を試みた。次に,中小規模工場の経営構造を紹介し複合的な生産体制と商品調達を可能とさせた要因を検討した。
- 2010-05-25