近代電気通信と米穀取引における最適契約問題 : 朝鮮開港場における客主業消滅と米穀商成長の背景
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概要
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本稿では,電信・電話の登場が輸出朝鮮米の取引制度をいかに変化させ,それが米穀商の成長にいかなる影響を与えたのかを明らかにした。朝鮮米の大量輸出がはじまる1890年代において開港場客主は米穀商と輸出米の流通・貿易利益を分け合っていた。1890年代に開港場客主業が繁盛した理由は,エージェントを監視する技術的限があったために,プリンシパルの米穀商とエージェントの開港場客主の間の契約形態が,流通マージンを開港場客主へ帰属させるインセンティブ契約にならざるを得なかったからである。しかし,1900〜10年代の情報化は米穀取引制度を大きく変え,開港場客主業は事業として成り立たなくなった。プリンシパルのエージェントに対するモニタリング能力が格段に上がり,米穀商は流通マージンを吸収し,専門仲買人の収入は市場均衡賃金である手数料に限定された。電信・電話を利用した米穀取引の具体例は,米穀取引所の利用と米穀商同士のやり取りに見られた。地方の米穀商が主要都市にある米穀取引所を利用するためには電信・電話が必須であり,米穀商同士の商談にも電信・電話の利用が定着した。
- 2010-05-25
著者
関連論文
- 植民地朝鮮における電信政策と電信架設運動
- 藤井信幸著, 『通信と地域社会』(近代日本の社会と交通5), 日本経済評論社, 2005年, 200頁
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