戦間期における産地絹織物業の展開と工業試験場 : 山梨県郡内地域を事例として
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概要
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本稿は,戦間期における工業試験場の活動を産地絹織物業の展開過程のなかに位置づけ,その歴史的役割を検討する。分析対象は山梨県郡内地域であり,山梨県工業試験場とする。郡内絹織物業は,裏地向けの先染織物を主力製品として,多品種少量生産を展開してきた。力織機化をはじめとする機械化,輸出向織物の製織奨励,人絹糸の利用という3つの産地構造の転換のなかで,工業試験場は活発に活動することでその展開を支えていく。とくに,社会的分業が未発達であった郡内絹織物業で,工業試験場は製織の前後工程にあたる準備,整理工程の発展に大きく寄与した。技術革新の進展に対して,民間レベルではキャッチアップしきれない生産工程の一環に携わって産地の社会的分業の一端を担い,その後,民間の工程専門会社の設立に尽力して一貫した生産工程を産地に根付かせる役割を果たした。こうした郡内絹織物業の社会的分業構造と山梨県工業試験場の関係を,織物生産の主な工程に焦点を当てて検討し,工業試験場の果たした役割を考察する。
- 2009-11-25