港湾調査はなぜ1906年に開始されたのか : 港湾調査史上の歴史的転換点
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概要
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港湾調査は,港湾行政に資する目的で,第二次世界大戦前後を除いて,1906年以来毎年実施されてきた。長い歴史をもつ港湾調査がなぜ1906年に実施されるに至ったか,その結果がどのように利用されたかを,調査主体であり,港湾政策の決定にその調査結果を利用した内務省土木局の認識に注意を払いながら,当時の政治・行政・経済の歴史的なコンテクストのなかで位置づける。港湾修築の主管官庁が,1874年に内務省土木局に定まった後も包括的な港湾調査は実施されなかった。しかし,港湾政策の提示と実現をめざす原の政治的な指導力,当時の交通・経済状況,内務官僚の認識および実査を担当する職員の増加によって港湾の臨時調査が一気に進んだのであった。重要港湾の選定は,港湾政策上の重要な政策課題である。さまざまな利害が複雑にからむ重要港湾の選定というプロセスにおいて,臨時調査は具体案の重要な根拠の一つとして利害関係者に対して説得力を持ちえた。「経営(修築費用の補助率)」に基づく等級づくりのための客観的な尺度として調査結果の数値は利用されたのである。
- 社会経済史学会の論文
- 2008-01-25