中世から近世移行期の銭貨流通 : 中国地方における考古資料を中心に
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概要
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本稿では,日本の出土状況に個別発見貨論を適用するための具体化を行った上で,中世から近世初期における中国地方におけるデータを収集・分析し,すでに検討を加えている九州地方における個別発見貨データと合わせて考察する。結論として,個別発見貨概念適用の主たる成果は,備蓄銭慣習開始以前の中国地方における銭貨流通の実質性を検出したことにある。これは,すでに九州地方における個別発見貨データから示された結果や,小畑による廃棄・遺棄銭の研究成果とも共通している。さらに,九州地方における銭貨流通の展開が,中国地方におけるそれと比較して,より早期から見られることが分かった。また,銭種構成に関して,個別発見貨,備蓄銭,廃棄・遺棄銭のデータの間に,同様の傾向が見られる中で,無文銭や洪武通宝といった特定の銭種について,小倉や石見銀山など一部の地域に突出して出土する現象が見られた。今後も,残された諸課題を追究しながら,現在日本貨幣史の主要な諸問題の解明に,個別発見貨資料の分析を通じて寄与していきたい。
- 2007-11-25
著者
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