清代中期広東沿海住民の活動,1785〜1815年 : 「吏科題本」糾参処分類を中心に
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概要
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18世紀末から19世紀初頭にかけて,中国東南海沿岸社会は海賊行為により大きな被害を受けた。被害者たちは海賊事件に関する被害届を紛々と提出したが,そこには彼らの日常生活に関する情報が詰まっている。本稿は中国第一歴史〓案館(北京)所蔵の「吏科題本」糾参処分類に収録される海賊事件に関する被害届から,清代中葉の広東沿海の下層社会における経済活動の一端を明らかにする。被害届の分析から,広東沿海における下層民のほとんどは,小規模な輸送業か漁業に携わるものであり,その資本規模は同時期の国際交易の1,000分の1から1万分の1程度で,数人で船舶を操業していた。また輸送業者は輸送業に特化していることが多く,小規模な商人から輸送を委託されていた。以上の分析から,数人で航行が可能な小規模な船舶を用いる海賊の略奪対象のほとんどはやはり小規模な船舶を経営するであったことが理解されるだろう。これはすなわち,同時期の海賊行為が必ずしも国際交易や地域間交易に対して大きな影響を与えていなかったことを示している。
- 2007-09-25