ペスト対策を通じたオランダ領東インド専門保健行政の定着,1900〜1925年
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概要
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本稿は1911年に始まるジャワのペスト流行と同年に設置された専門保健行政の定着過程に注目し,保健行政(BGD,市民医務局)と一般内務行政(BB)と住民の間の相互作用を分析する。ベストが内陸農村部を中心に流行したために,対策は現地住民を中心とした。決定的な介入方法に欠いたため,BGDのとる対策は,可能性のあるケースを隔離するために脾臓穿刺を通じて患者を探すという緊急対策にせよ,家屋を鼠の住めないようにする「予防」対策にせよ,懐疑と批判をもって迎えられた。結果的に,国を普遍的に領域管理するという発想に基づいていたBGDは,普遍的アプローチから,対策の失敗や地域による違いに考慮した,より複合社会に合致した調査重視のアプローチに自らを順応させた。この多くの実行権限のBBへの移譲を伴った態度の変化は,BGDが引き続く住民からの反発の前で正当性を獲得し,予防的方策の重要性を強調することを可能にした。この過程を描くことで,医学を軸とした領域的な疾病管理行政が,ベストという具体的な感染症の流行を契機に植民地への適合を模索しつつ定着したことを示す。
- 2007-09-25
著者
関連論文
- オランダ領東インドにおける保健制度 : 確立の背景とその後の展開(第72回研究大会報告)
- 書評 Frederick Cooper: and Ann Laura Stoler, eds. Tensions of Empire: Colonial Cultures in a Bourgeois World. Berkeley: Los Angeles: University of California Press, 1997, x+470p.
- ペスト対策を通じたオランダ領東インド専門保健行政の定着,1900〜1925年