戦間期における釜石製鉄所真道会の組織と機能 : 工場委員会の一事例として
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概要
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日本における工場委員会の展開は,経営家族主義をはじめとする日本的経営論の主要論点にかかわる重要な問題であり,資本形態ごとの工場委員会のあり方の差異を含めて,より多くの工場委員会の具体的事例研究の蓄積が必要であると思われる。本稿では,1920〜30年代において岩手県釜石製鉄所に成立した「真道会」について,これを工場委員会の一事例と位置づけて,その組織と詳細を明らかにするものである。真道会の組織は,初期の田中鉱山時代の全従業員的な組織から,三井鉱山傘下になって以降職工中心の組織へと変化し,代表機関たる評議員会も会社側と職工側という二極構造になっていった。真道会の機能は,会則上では賃金や労働条件の交渉・協議の機能が付与されているにもかかわらず,実際の議案・会計や懇談内容を見ると職工の福利厚生・共済部分のみの協議・陳情に終始し,しかも当初より懇談という同朋的かつ曖昧な意見交換の形が大きな役割を果たしていた。真道会はこうした従業員福祉の実現を媒介に経営家族主義的な協調を実現するものであった。
- 社会経済史学会の論文
- 2007-07-25