明治後期〜第一次世界大戦期における集散地肥料卸商の活動と展開 : 奥村嘉蔵東京支店の帳簿から
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は近代東京の代表的な集散地肥料卸商であった奥村嘉蔵東京支店の肥料取引に関する史料から,明治後期から第一次世界大戦期にかけての肥料流通の様相および集散地肥料卸商の機能と活動を明らかにすることを課題とする。奥村嘉蔵東京支店は,集散地肥料卸商として内外肥料流通の結節点にあって各種肥料を集荷し,関東地方を中心とした広域に肥料を販売していた。しかし,魚肥流通の変化を背景として,奥村嘉蔵東京支店は地方肥料商に対して資力と情報力で優位性を持つ大豆粕などの輸入肥料取引に力点をおき,さらに新興化学肥料メーカーである大阪アルカリの大特約店となって地方肥料商を組織化することでその流通上の位置を保持した。魚肥に関しても旧来の大口仕入だけでなく,小口仕入と鉄道による地方直送に着手するというように物流および取引形態でも変化がみられた。明治後期から第一次世界大戦期にかけての時期は地方に限らず,集散地をも巻き込む商流・物流両面での肥料流通の変革期であり,その中で集散地肥料卸商の活動と機能にも大きな変化が生じていたことを奥村嘉蔵東京支店の事例は示している。
- 2007-05-25