祟り・治罰・天災 : 日本列島における災禍と宗教(<特集>災禍と宗教)
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概要
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自然に関する科学的な知識を欠いていた前近代社会では、世界の他の地域と同様、列島の人々は不可避の災禍を超越的存在(カミ)の仕業と結びつけ、その出現の必然性を了解しようとした。古代社会では、自然災害はカミが人間に与えるメッセージ(崇り)と解釈された。仏教が受容され世界についての体系的な解釈が定着する中世社会になると、災害についても、その発生を治罰と救済の因果律のなかで説明しようとする傾向が強くなった。根源的存在のリアリティが衰退し、死者を彼岸の仏による救済システムに委ねることができなくなった近世では、災禍を天災として忍受する一方、不遇な死者を祖霊に上昇させるための長期にわたる儀礼や習俗が創出された。「近代化」のプロセスは、生者とカミ・死者が共存する伝統世界から後者を閉め出すとともに、特権的存在である人間を主人公とした社会の再構築にほかならなかった。東日本大震災は、そうした近代の異貌性を浮かび上がらせ、私たちの立ち位置と進路を再考させる契機となるものだった。
- 2012-09-30
著者
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