会津管内における市町村要保護児童対策地域協議会の現状と課題
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概要
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2005(平成17)年4 月の改正児童福祉法により、「市町村」は児童家庭福祉相談の一義的窓口として位置づけられ、児童相談所は市町村が行う児童家庭福祉相談の後方支援を行うこととされた。また、主に市町村において児童家庭福祉相談を行う対応機関として「要保護児童対策地域協議会」が法定化された。要保護児童対策地域協議会は、1996(平成8)年からの厚生省「児童虐待ケースマネジメントモデル事業」および2000(平成12)年からの厚生省「児童虐待防止市町村ネットワーク事業」の実績に基づいて法定化された。そのため、児童相談所児童福祉司等が行う「ケースワーク」とは異なり、地域での生活を希望する複合的なニーズを持つ利用者に対して、サービスや支援のネットワークを組織化し、調整し、維持するための社会福祉援助技術である「ケースマネジメント」が主たる援助方法となる。2009(平成21)年4 月1 日現在の時点で、全国の要保護児童対策地域協議会等の設置数および設置率は、1755 か所(97.6%)となっている。しかしながら、会津児童相談所管内の設置率は2009(平成21)年12 月現在で82.4%と低い数値に留まっている。また、会津児童相談所管内の市町村では設置された要保護児童対策地域協議会等の活用が十分に進んでいないという実態が存在する。この背景には、(1)市町村の担当者の異動、過疎化や少子化・高齢化の進行による参加者の固定化、スーパーバイザーの不在等といった「マンパワー不足」による要保護児童対策地域協議会設置の遅れ、(2)要保護児童対策地域協議会に適合するケース数の少なさ、関連施設・機関からの要保護児童対策地域協議会設置意義の理解不足、要保護児童対策地域協議会事務局の担当者の信頼性の不足等を要因とする要保護児童対策地域協議会活用の不活発さ、(3)市町村と児童相談所の双方の連携体制構築上の問題や、第三者的立場からのスーパーバイズ体制の不十分さ等が背景にあると考えられる。筆者は福島県児童虐待対応専門員および市町村児童相談体制強化支援アドバイザーとして、市町村児童相談体制強化実践研修会講師や、要保護児童対策地域協議会代表者会議等における講演会講師としての活動を通じて、主に上記(1)の問題点を改善するための取り組みを続けてきた。今後は(2)および(3)の課題を改善するための取り組みが必要になると想定される。
- 2010-03-25