現代日本における反貧困活動の展開 : 時空間の人間生態学
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概要
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貧困問題に関しては、わが国でも長い歴史がある。だがとくに2006年以降、貧困が可視化され、多くの人びとが注目するようになったと言われている。本稿の目的は、2006年から2011年までの約5年間の現代日本における反貧困活動の展開過程を、行政・国家、市場社会、他の活動などとの関係性のなかで描き出すことにある。そのために、初期シカゴ学派の人間生態学/総合的社会認識の視点を活用する。それに加えて、ネットワーキングの関係性の変容の過程を描き出すために、対抗的公共圏の概念をもあわせて活用する。このことにより、人間性(human nature)がかかわる人びとの意識・意欲の観点から、時空間における圏域どうしの関係性をとらえることが可能になる。結果として、反貧困活動は、1.貧困問題が可視化され「公共圏の衰退が問題化」された段階、2.「派遣村」活動が広がり「対抗的公共圏の創出/創発」がなされた段階、3.派遣村活動がネットワーク重視の反貧困活動へと展開し、「対抗的公共圏が諸圏域との協同を強化」していく段階、4.形成したネットワークを活用し「対抗的公共圏がその目的の多様化を進展させ/変容させていく」段階、へと展開したことが明らかとなる。このような展開過程は、第1に福祉供給源の動態的展望、第2に社会的組織化における人々自身の立ち位置の同定、第3に社会学史を再検討した方法論の活用、などに関する含意を有している。
- 2012-05-26