ボランタリー・ケアラーは誰なのか? : ボランティア的行為における"K"パターンの再検証
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概要
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本稿の目的は、家族やケア専門職としてではなく、ボランティアとして要援助者をケアする人、すなわちボランタリー・ケアラーはいかなる人々かを明らかにすることである。鈴木(1987)は、「ボランティア的行為」は、上位階層による「ボランティア活動部分」(Vパターン)と下位階層による「相互扶助的行為部分」(Λパターン)の合成によって成立するとする階層的二相性(Kパターン)論を提示した。階層的二相性論はボランティア的行為と社会階層の関連を示した重要な知見として知られているが、十分に検討されているとはいいがたい。また、現代の、広い地域に住む人々を対象にしたときに当てはまる理論であるのか定かでない。そこで本稿では、2010年の全国調査データを用いてKパターンの再検証を試みる。その際、(1)多変量解析によってKパターンが確認されるか、(2)「相互扶助的行為部分」の担い手はいかなる人々であるか、という2点に着眼する。分析の結果、第1に、ボランティア的行為と社会階層との関連において、Λパターン(下層一相性)の傾向がみられること、第2に、「相互扶助的行為部分」と考えられるボランティア的行為は、低収入層、低学歴層、女性、高齢層、長期地域居住者に担われていることが明らかになった。これらの知見から、地域共同体に根づいて暮らす下位階層の人々が、ボランタリー・ケアラーとして重要な役割を果たしていることが示唆された。
- 2012-05-26