自由電子レーザーによる象牙質の蒸散
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概要
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目的:自由電子レーザー(FEL)は波長可変性だけでなく,極短パルス幅のミクロパルスを発振させることができる.そのため,研究対象のレーザー機器と同じ波長に調整し,パルス幅の異なるレーザーを発振させることによって,パルス幅の違いが被照射体に与える影響について有益な情報を与えてくれるものと考えられる.材料と方法:FELの極短パルスの効果に着目し,エルビウムヤグ(Er:YAG)レーザーと同じ2.94μmの波長に調整したFELを用いて,ウシ象牙質蒸散時の様相を高速度カメラにて観察するとともに,蒸散時の削片を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し,蒸散深さをEr:YAGレーザーと比較検討した.さらに,FELの波長を2.50, 2.94, 3.50, 4.00μmに変化させてウシ象牙質に照射した際の蒸散深さ,照射部(照射側)および照射部直下の試料背面(歯髄側)の温度上昇を放射温度計にて測定した.成績:1.高速度カメラで得られたウシ象牙質蒸散時のフレームレート8,000fpsの画像から,Er:YAGレーザー照射では象牙質削片の飛散が観察でき,収集した削片のSEM像では,10〜100μmの大小さまざまな削片を観察できた.一方,FELではレンズの拡大率50倍とした画像から削片の飛散を観察できなかったが,収集した削片のSEM像では,10〜20μmの微細な削片が多く認められた.2.本実,験条件におけるEr:YAGレーザーとFELの蒸散深さは,それぞれ208, 670μmで,FELではEr:YAGレーザーの3倍以上の蒸散深さであった.3.FELの波長を2.50, 2.94, 3.50, 4.00μmに変化させた際の蒸散深さは,それぞれ35, 671, 414, 220μmとなり,波長2.94μmにおいて有意に蒸散深さが深くなることが示された.4.FELの波長を2.50, 2.94, 3.50, 4.00μmに変化させた際の温度変化は,照射側でそれぞれ2.4, 2.2, 2.0, 2.2℃であり,歯髄側では1.1, 1.1, 1.3, 1.3℃であった.結論:2.94μmに近似した波長で,パルス幅が熱緩和時間よりも短いレーザーを使用することで,象牙質を効率的に蒸散できることが判明した。
- 2012-06-30
著者
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