労働者自主生産運動の内実 : ある自主生産企業の運営実態に即して
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概要
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本稿では,企業倒産後も労働者自らが事業再建し運営を継続するという労働者自主生産運動に着目し,その実態について考察した。とりわけ,この運動は,(1)企業倒産=労働者全員解雇に対する労働者側からの雇用確保戦略として有効であるか,(2)以前のヒエラルキー組織に代わって民主的組織を構築する契機となりうるか,という二つの論点について考察した。そして前者については,自主生産企業の存続可能性は高いとはいえないが,一定の条件市場の開拓,人材の確保,資金調達先の確保等が整えば存続可能であり,したがってまた雇用確保戦略としても有効であることを指摘し,後者については,自主生産企業における意思決定の民主性は,従業員個々の責任性の相違に基づく能動性の違いから,「意思決定機会の平等」という形では貫徹し難いが,代わりに情報の共有化や発言の場の設置によって「発言機会の平等」という形で担保しうることを指摘した。
- 2011-10-20