稲わらを添加した水田土壌還元層における胞子形成性嫌気性窒素固定細菌数の変動
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概要
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ポット試験により稲わら,部分分解稲わら,セルロースを乾土に対して0.1%および1%の割合で水田土壌還元層に均一に混入した。耐熱性嫌気性窒素固定細菌(HANB)数の変動を,改変無窒素Clostridium培地を用いた嫌気的ロールチューブ法により調べた。土壌希釈液は培地に接種する前に80℃10分間または60℃30分間加熱処理した。稲わら1%添加土壌において,混入後20日間にわたり無窒素培地上で良好に生育したコロニー数が対照区に比べてわずかに増加した。この良好に生育したコロニーは,いくつかの単離菌のアセチレン還元活性測定および顕微鏡観察,Clostridiumの培地であること,並びに,土壌希釈液を加熱処理したことから判断して,主に窒素固定性Clostridiumのようであった。その他の処理土壌においては,HANB数は対照区とほぼ同じであった。他方,部分分解稲わらあるいはセルロースを1%添加した土壌中の嫌気性従属栄養細菌数は対照区と比べて約3倍に増加した。この嫌気性従属栄養細菌数の増加は窒素固定性Clostridium菌数の増加によるものではない。以上の結果より,水田土壌還元層へ混入されたセルロースあるいは稲わらの分解・資化における窒素固定性Clostridiumの寄与は小さいであろうという可能性が示唆された。
- 日本土壌微生物学会の論文
- 1990-11-01