水田土壌中の易分解性有機態窒素(シンポジウム:有機物と土壌微生物-農業生産並びに環境浄化の視点から-)
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概要
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水田土壌中の易分解性有機態Nの動態に関する定量的評価を行なうため,まず湛水土壌モデル系でN無機化過程を速度論的に解析した。その結果,Nの無機化は生成速度定数の異なる2つの一次反応が平行的に進行していると考えられ,各反応のパラメーターにはインキュベーション温度,土壌の前処理などが影響していた。次いで,堆肥連用土壌と無堆肥土壌でのN無機化を全N量vsアンモニア生成量のグラフ上で比較し,アンモニア化成量(30℃,4週間)が有機物集積過程を調べる際に有力な指標となることが見出された。また易分解性有機態Nの集積過程には土壌の種類によらない一般的な法則性のあることが推察された。さらに実際の水田で湛水期間中のアンモニア化成量の変化を調べたところ,作土最表層(0〜1cm)に顕著な増加が認められたが,作土内部では水稲の活発なN吸収にもかかわらず一定の増減傾向は見出せなかった。そこで土壌-植物系での易分解性有機態Nのより詳細な動態と水稲吸収Nの直接的給源を探るため新らたな指標を確立することにした。ここで土壌中の微生物体Nを最も活発に代謝回転する易分解性有機態Nと想定し,クロロホルムくん蒸処理によるバイオマス測定法を応用して,水田土壌に適用できるよう改良した。またバイオマスと同程度の分解性を有する有機態Nも含めた"有効態N"を定義し,水田土壌中での"有効態N"の経時変化を追跡した。その結果,まず湛水土壌でも約12時間のくん蒸処理により微生物の大部分を殺菌できることが確かめられた。ついで,実際の水田では"有効態N"は作土最表層で増加し作土内部では漸減したが,作土内部でもその^<15>N比の変化は大きく,水稲に吸収される一方で他のN画分から補給されていると推定された。また時期別水稲吸収N中の^<15>N比は,土壌中にアンモニア態Nの残存している生育前半にはアンモニア態Nの^<15>N比に近く,生育後半には"有効態N"の^<15>N比にほぼ一致した。このことは上記の推定を支持していると考えられる。
- 1984-12-20
著者
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