農業生産の発展と労働供給 : 20世紀初頭大阪府泉南地方における織物業の生産動向との関連を中心に
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概要
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戦前の日本では,農業部門からの潤沢な労働供給が存在したため各部門の賃金の上昇が抑制されたと考えられてきた。だが,そこで見逃されてきたのは,日本では,工業化とともに農業生産が目覚しく発展した点てある。こうした農業生産の発展は,農業部門の賃金を引き上げ,さらに農業部門から工業部門への労働供給を制約し,工業部門の賃金を上昇させる役割を果たした。そこで本稿では,この点が最も顕在化した地域として,全国有数の綿織物の産地であった大阪府泉南地方を対象とし,農業生産の発展が農業部門から工業部門への労働供給に与えた影響を明らかにした。泉南では,1900年代中頃まで綿織物業は問屋制家内工業の下で農家の副業として発展したが,1900年代末から力織機を備えた織物工場が設立されると,問屋制家内工業が衰退し,農家は副業の綿布生産による収入を失った。しかし,この地域では,農業生産が発展した結果,農家は農業収入の増加によって副業収入の減少を補うことができた。そのため,農家は働き手を織物工場に送り出そうとせず,織物工場の経営者は高賃金を支給して人手を確保する必要に迫られた。
- 社会経済史学会の論文
- 2012-02-25
著者
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