各種地質・地球物理データから見た東北地方の熱異常地域(<特集>東北日本の島弧地殻構造と地質構造発達史)
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概要
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東北地方の広域的な熱構造は,地熱資源評価や高レベル放射性廃棄物の地層処分のアセスメントで検討されている.地熱資源アセスメントとしては,100万分の1「東北日本の地熱資源図」に温泉放熱量分布図,地温勾配図,重力基盤深度図,P波速度減衰分布図を重合して検討された.その結果,岩手県葛根田地熱地域で実証されたような新期花崗岩に伴う深部地熱系は,次のような地域に期待できると指摘されている.1)第四紀火山近傍で,高温温泉・噴気の分布集中域.2)広域的な高温異常域かつ地温勾配の高異常域.3)重力基盤深度が浅く,かつ広域的な隆起域.4)地殻内地震震源下限が浅く,P波速度減衰が認められる活火山集合域.このような地域として仙岩,栗駒-鳴子,磐梯-安達太良地域があげられている.一方,高レベル放射性廃棄物のアセスメントでは,非火山性地域の熱・熱水異常地域が検討された.東北地方中-北部において,地形,地質,地温,震源,比抵抗,キュリー点深度,重力基盤,P波速度などの既存データが収集され検討されている.その結果,熱異常域の特徴は次のようにまとめられている.1)深部では,火山フロントより背弧側で高温となり,前弧側で低温となる.背弧側と前弧側では,概して山地で高温となり低地で低温となる傾向がある.このような深部の広域的な温度分布は地温勾配,重力基盤深度分布,地震波速度から推定される先第三系基盤岩深度分布,キュリー点深度等温面分布,浅部P波速度と相関している.2)浅部では,第四紀火山地域で浅所貫入マグマの影響で相対的に高温となる.低地でも帽岩の影響で多少高温となる.これらの温度分布は地温勾配,温泉分布,比抵抗分布,P波速度構造と相関している.以上のようなことを勘案して,東北地方の広域的な熱構造をタイプ分けすることができる.火山地域は第四紀火山地域の1タイプに,非火山地域は前弧側低地,前弧側山地,背弧側低地,背弧側山地の4タイプに区分できる.
- 2012-05-25
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