水害防備林の今日的意義 : 阿武隈川支流荒川における利用の変化をとおして
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
洪水を防ぐ目的で河川に沿って植えられたり管理されている森林が水害防備林(以下水防林と略す)である。河川改修の進んだ現在,水防林の面積は減少する過程にあるが,今日においてもその意義は存在すると考えられる。そこで福島県にある阿武隈川支流荒川の水防林を例に取り,その過去と現在の利用のあり方を通して,水防林の今日的な意義について検討した。荒川水防林は一部が「水林自然林」として遊歩道などが整備され,レクリエーションの場として活用されている。この事例からみて水防林は,散策や森林浴,自然観察や環境教育,河原でのキャンプなど多様なレクリエーション活用の可能性を持っている。また,荒川の水防林は江戸時代以前から住民自身の手による水防活動の中心として活用されてきたもので,自主防災といわれる自立性の高い防災活動の一環であった。今日日本では堤防に対する信頼が高まったため,住民自らの力で水害を防ぐという「水防」の意識が低下しつつある。その意味で水防林は水防の思想と技術を伝達する文化財的な意義を持っている。
- 森林計画学会の論文
- 1997-09-30