「地域政策の分岐点」討議後の経済地理学
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概要
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国土総合開発法を理念的な背景として研究されてきた地域政策は,同法の廃止に伴い,「地域政策の分岐点」にたたされ,2007年から討議が始まり,第56回大会のテーマになった.そして地域間の均衡型政策から地域再生政策への転換が提起された.しかしフロア討論を踏まえ,「座長の所見]は二者択一論をさけ,ポリシー・ミックス型へのあり方を指示した.そのミックスに対し,(1)経済の領域,(2)社会の領域,(3)環境の領域の総合的研究と定義する秋山氏の提案に,私は賛同を示したい.西欧の地理学は,1968年のパリの5月革命を契機として「空間論的転回」を行ない,新しい地平をきり拓いてきていた.それは「知覚される空間」と「思考される空間」の研究に専門化していた地理学を,「生きられる空間」に包摂して新しい空間論を編成しようという言説であった.日本の経済地理学会は第三の領域として「環境の領域」を取り入れたが,これはルフェーヴルの三項化,ソジャの第三空間・三元弁証法,ハーヴェイの地理学を加えた史的唯物論に対応する視点設定であった.私は,世界的な地理学の思想傾向と相乗する経済地理学会の展開を期待したい.
- 2012-03-30