非営利組織の財務諸表の体系と機能 : 財務諸表の類型化の試み
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概要
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本稿では,非営利組織の種類によってそれぞれ公表する財務諸表が異なっている中で,それらの財務諸表の体系と機能を整理してみた。そこから,非営利組織では,その基本目的から導き出された機能を財務諸表の間で分担できるように財務諸表が体系化されていることを明らかにし,類型化(営利企業旧型・新型と非営利組織旧型・新型)が可能であることを示唆した。非営利組織の活動がより顧客志向になり,また収益事業の割合が増すにつれて市場原理の導入による成果主義が浸透していっているということを説明し,営利企業と非営利組織の境界線は,さまざまな視点からみて曖昧になってきていることを指摘した。したがって,今後,非営利組織の会計を考える上では,非営利組織特有の業務および財務の性質を考慮に入れながらも,営利企業のものと類似する概念フレームワークや会計基準を前提にしていかなければならないことを提言した。それは,非営利組織間の財務諸表が一体的に体系化されて,あるいは営利企業と統合的に整備されて財務諸表分析の技法がより発展し,非営利組織の経営分析の信頼性と有効性が飛躍的に高まるからである。
- 2012-03-31