Web検索と知識構造の変化:検索前後の連想語数の変化から見えるもの
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概要
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本研究は、デジタルネイティブ世代の大学生が、知識の習得を行う際に Web 検索を行うことを明示的に示唆されることで、知識構造にどのような変化が生じたかということを検討したものである.実験参加者である日本人大学生をまず第 1、第 2 のクラスに分け、第 1 のクラス内の 2 グループ (A,B) では、同一のテキストを使用して 10 テーマに関する学習を行った.学習の効果を計測するための指標として、テーマに関係すると思われる単語を連想して一定の時間内に書写する「連想語課題」を考案し、学習前と学習開始の 6 ヶ月後に同一課題を行った.第 2 のクラス内の 2 グループ (A,B) では、やはり同一のテキストを使用して 1 つのテーマに関する学習を行った.こちらのグループも第 1 のグループと同様、学習前に 「連想語課題」 を行い、最初の課題が終了した時点の学習開始の 1 ヶ月後にもう一度 「連想語課題」 を行った.また、それぞれのグループは 「Web で入手できる情報以外の資料を用いて学習することを明示的かつ継続的に指示された」 A グループと、「Web 検索を用いて学習することを明示的かつ継続的に指示された」 B グループとに分けられた.それぞれのグループでは、分析の結果、第 1 、第 2 のどちらのグループも、学習前よりも学習後の方が、課題に関して連想できる単語の数が増加していたが、「Web 検索を用いて学習することを明示的かつ継続的に示唆された」 B グループの学習後の連想語の単語想起数が有意に多かった.これらの結果は、デジタルネイティブ世代の大学生で、Web 検索に抵抗がない状態であっても、情報検索の仕方の指示の出し方によっては、単語レベルでの知識の獲得の仕方に差が出る可能性があるということを示していると思われる.なお、アンケート調査によってデジタルネイティブ度を評価するとともに、Web 検索に対する感覚の調査も行った.
- 2012-07-25