産業革命期イングランドの女性手織工 : 1841年センサス個票によるプレストン地区の分析
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概要
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本稿は,英国産業革命の中軸を担った近代綿工業の中心地帯プレストンにおいて,手織工世帯が遅くまで生き残り,少なくともその一部は機械制工業と比較しても高級な布を生産していたこと,しかも織物セクター(力織機,手織機の両セクターを含有)の織布工の約半数が女性であった可能性があることを明らかにする。従来の綿業史においては,19世紀初頭における手織業の急速な衰退が強調されてきた。そのような理解においては,手織工は主として男工であったと考えられている。このような見解に対し,本稿では,1841年人口センサスの個票(約5万件)を逐一分析することで,この時期において女性手織工の比率は高く,男性よりも高い収入を得ていた可能性があったことを実証する。産業革命終盤期の英国綿工業において,手織工部門が一定の比重を占め,女性労働が男性とかわらない基幹的な地位にあった可能性を示唆することにより,英国綿織物業の労働力構成の変容過程の理解に,在来産業の役割を評価する方向からの一定の修正を迫ることになると思われる。
- 2011-08-25