人事労務管理制度の改定と産業内企業間関係 : 鉄鋼産業の賃金制度改定を事例として
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概要
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本稿の課題は,1950年代から60年代の人事労務管理制度の改定と産業内の企業間関係との関連を,八幡製鉄・富士製鉄・日本鋼管による1962年の職務給制度導入を事例に分析することである。従来の研究は,この種の制度改定を企業内的な要因から説明するものが中心であり,上述したようなマクロ的な視角をふまえた分析は十分ではなかった。本論文があきらかにしたのは,大きな制度改定をするためには,同一産業内において企業規模や市場領域,労務管理などで共通点の多い企業の間での連携と調整が必要であり,同時にこの動きを主導する企業の存在が欠かせないということである。1962年以前の鉄鋼大手企業における賃金制度改定の限定的な性格と,1962年の職務給制度導入がもたらした変化の大きさというコントラストは,このような要因から説明できる部分が多い。こうした事実をふまえつつ,本稿の結論では,この時代の人事労務管理制度の改定に関する一般的な動向を,企業間関係という要素を織り込んだうえで類型化して把握するためのフレームワークを提示している。
- 2011-08-25