石油化学工業における投資調整と設備過剰の深化 : 不況カルテル締結後の投資活動とその帰結(1972〜85年)
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概要
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本研究の目的は,石油化学工業(エチレン製造業)が設備過剰へと陥った経緯を明らかにすることである。特に,エチレン不況カルテルが締結された1972年以降の時期に注目している。この期間における石油化学企業の投資行動や投資調整は,過去の研究史においてはほとんど検討されてこなかった。しかしながら,本研究の考察によって,過剰設備の形成という点では,多くの先行研究が注目する30万トン基準運用時よりも,本稿が検証した期間における設備投資の方が大きな影響を及ぼしていたという新たな事実が指摘される。もちろん,当該期間においても設備投資調整は実施されていた。さらに本研究の分析により,1972年に設備過剰に陥り,不況カルテルが締結された後も設備投資が継続された理由が明らかにされる。その理由は,高度経済成長の終焉や石油危機の発生といった外部環境の変化にもかかわらず,従来と同様の仕組みによる設備投資調整が継続されたことにある。従来型の調整が継続することで,石油化学工業はより深刻な設備過剰へと陥っていくことになった。
- 2011-05-25
著者
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