養子相続とファミリービジネス : 近代日本富裕企業家・商人層の事例から
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概要
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本稿は,近代日本のファミリービジネスが持つ独自性の一つでありながら,これまでほとんど考察が行われてこなかった養子による家督相続に焦点を当て,その特徴や傾向に基づき類型化を図り,分析を試みたものである。ここでは養子縁組までの経緯などを文献や資料から収集することが容易であると考えられる富裕企業家・商人層を分析対象とし,具体的に,養子による家業やビジネスの相続経緯や背景などを示している。また,実家・養家間のネットワークが果たした役割など経営史的な側面についても部分的な考察を試みている。本稿の特徴は,情報収集上の資料として,出版された文献のみならず政府の叙位・叙勲・褒章関係の公文書を渉猟し,その情報に基づいて新たな発見や仮説を提示したことにある。また,これらの情報に基づいて養子の経緯に従い,親族型,同階層間以上移動型,奉公型という3類型への分類を試み,各類型の特徴の相違点を指摘している。そして全般的には,養家側の親族ネットワークへの統合の可否が,養子の養家における地位の安定性を左右したことを示唆している。
- 2011-02-25