中国における『源氏物語』全訳の成立に関する一考察 : 豊子〓,銭稲孫,周作人のかかわりを中心に
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概要
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中国における初めての『源氏物語』全訳は豊子〓のみによる訳業であったというのが今日の定説となっている。しかし,本稿の発見した新史実により,この定説が覆されようとしている。つまり,中国初の『源氏物語』全訳の成立にはこれまで知られてこなかったプロセスがあった。本稿は楼適夷及び文潔若の存在,特に新中国における豊子〓・銭稲孫・周作人の境遇及び全訳をめぐる三人のかかわりについて考察を加えた。その結果,全訳の成立過程で銭稲孫と周作人が深くかかわり,出版社の編集者として文潔若も尽力し,リーダーだった楼適夷が全訳者の人選において中心的役割を果していたことなどが本稿によって初めて明らかになったのである。
- 2012-02-25