解決志向ブリーフセラピーを取り入れたアルコール依存症治療プログラムの開発(<特集>解決志向ブリーフセラピーの新たな展開(Berg先生追悼特集))
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概要
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従来のアルコール依存症治療(ARP)では,アルコール問題を否認する患者に対して直面化を図り,患者が断酒のモチベーションを持つことを求めた。その上で通院の継続,抗酒剤の服用,自助グループヘの参加,などの取り組みを続け,最終的にはアルコールを必要としない「人間性の回復」を目指した。しかし,断酒のモチベーションを持てないために専門治療へつながらず,臓器障害を悪化させて死に至る患者も多くみられた。そこで,我々は「アルコールの問題」や「断酒」といった視点ではなく,「患者にとって重要であること」「患者が何とかしたいと思っていることの解決」に焦点を当てた治療プログラムを開発した。本研究では,解決志向ブリーフセラピーを取り入れたアルコール依存症入院治療プログラム(以下,KSP)の有効性について検討し,アルコール依存症治療における新たな方法の示唆を得ることを目的とした。その結果,KSPの取り組みを通して,これまで「治療」という土俵にさえ上がれなかった群が治療対象となった。さらに,個別的で創造的な解決によって,時に全く違う価値観や意昧づけを得て,自らの人生に向き合うきっかけをつかんだ事例もあった。KSPは,治療導入部分で受け入れ対象が広がり,患者主体の多様な介入が可能となる,アルコール依存症治療の新たな方策であることが示唆された。
- 2008-10-30