ソーシャル・キャピタルの集合的効果
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概要
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この論文の課題は、住民の保有するソーシャル・キャピタルが、望ましい地域社会を形成するための資源として、どのような効果を発揮しうるのか、この点を実証的に明らかにすることである。課題の達成にあたり、第一にソーシャル・キャピタルの構成要素を確定する。親密なネットワーク量、橋渡しネットワーク量、支援期待度、地域参加度、町内信頼度の5つの要素である。この5つの要素をすべて量的変数に変換し、合算することによってソーシャル・キャピタル得点を算出する。第二に、ソーシャル・キャピタル得点とコミュニティ・モラール、投票行動、住民解決志向との関連を明らかにする。分析結果は、ソーシャル・キャピタルがコミュニティ・モラールを高め、投票行動を促進させ、共通・共同の問題を住民たちで処理しようという志向を強める効果のあることを示す。第三にソーシャル・キャピタルと地域特性との関連を追求する。分析で用いるデータは、2009年9月に20歳以上75歳未満の世田谷区民10,000名を対象者として実施された統計的標本調査の結果である。世田谷区は区内全域に中学校区に相当する27の町づくりセンター地区を設定しているが、対象者の居住地を手がかりとしてセンター地区別にソーシャル・キャピタル得点の平均を求め、平均の差が有意であることを確認する。さらに地域特性を表す3つの変数群-社会階層的変数群、家族的変数群、高齢化変数群-とセンター地区別ソーシャル・キャピタル得点との関連を明らかにする。第四に、このような関連を踏まえて、ソーシャル・キャピタル得点の高いセンター地区に居住すること自体の効果を考察し、その効果をソーシャル・キャピタルの集合的効果と名づける。