社会福祉における人間観の課題 : 生成的側面への焦点化
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概要
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本研究は,社会福祉を考えていく上で必要不可欠となる人間理解について,主に西洋社会に焦点を当てることによって,現代へと至る人間観のプログラムを明らかにし,新たな理論的展開を視野に入れた今後の社会福祉における人間観の課題について,考察を深めていくことを目的としている.これまでの人間観の歴史的なプログラムは,啓蒙運動の影響もあり,自由で自律性をもった理性ある人間像を作り上げてきたが,現代においては経済的側面からの規定が強く進み,その側面からの個人主義が社会福祉における人間観を規定してきていることが明らかである.しかし,社会福祉はそこで規定されるいわゆる弱い個人から強い個人への変換を目指すという二項対立的な理解に収まるものではなく,そのため,Herderにみられるような相互依存する人間の生成的側面への検討を深めていく必要性があることが明らかになった.そのことは,二項対立的な人間観から常に生成変化する人間観という理解の必要性を喚起している.また,平均的な個人への収斂という枠を超え,文化や時間を視野に入れた差異を持った存在として考えていくことでもある.そのため社会福祉においては,相対主義による排他的側面に注意しながらも,常に反本質的に可変性をもった人間観が課題となることが考察された.
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