石藥の研究(1) : 玄精石の鑛物學的研究
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概要
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玄精石は中國で解熱藥として用いられてた石藥の一種である.脇水博士は國譯本草綱目に於て芒硝の一種と考定されたが,筆者が中國市場でみたものはリード,朴及び章の各氏が云つているように透石膏の特殊な結晶に相當するものである.筆者は物理的性質に於て上記3氏の試みなかつた光學的諸性質を調べ,化學分析を試みて石膏なることを確認した.然し玄精石が普通の石膏の結晶形態と全然趣きを異にすることより(1)玄精石は石膏の特殊な晶相のものであるか(2)玄精石と形態的に類似する芒硝又は芒硝系鑛物の交代假像であるが.この2つの場合を考慮しつつ研究をすすめ(1)の場合であることを確かめると共に,普通の石膏にみるb, m面は全然之を缺きl, d, c, n, γ, λ, w等の諸面を認めた.そして綜合ステレオ投影圖を描いた.章氏は玄精石に認めらるる面としてl及び彎曲せる面eを記載せるのみであるが,このeは筆者のL部の面(即ち互いに鈍角をなして交る諸面c, w, γ, n等よりなるが溶蝕のため稜,隅角が消失し一つのレンズ状の面となる)に相當し,筆者はeは存在しないものとした.各晶面の發達の消長關係から玄精石の晶相をA, B, Cの3型に分けた. l, dの乗る部分をPとよび, c, n, γ, λ, wの諸面の乗る部分をLと呼ぶこととすればA型はP≪LB型はP≒L, C型はP≫Lなる形式で現わしうる.之等各型の晶相の斜角圖を描いた.双晶にはaを双晶面とする透入双晶とdを双晶面とする接觸双晶がある.筆者は章氏が提起したe(103)を双晶面とする新式双晶(玄精石式双晶)は氏の誤認であるとした.玄精石晶體内に含まれる包有物には粘土質鑛物,名稱不詳の鑛物及び空晶存し空晶内には液體,氣泡を包有する。筆者は包有物が晶體内に規則的な分布をなすのを觀察し,その状態より玄精石の各晶相及び普通の石膏にみる晶相との相異を力學的に解析し説明を試みた.本草書記載の玄精石の氣味及主治効能が,果してこれと同成分の石膏のそれと一致するや否やを吟味するに科學未開の古人が經驗的に歸着した兩者の治効に少しの徑庭もないことを知つて驚嘆した.
- 日本生薬学会の論文
- 1949-07-15