紛争後の援助におけるコミュニティの社会開発に関わる課題 : 東ティモールの事例から
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概要
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冷戦の終悪以降、国内紛争が頻発するにつれて、国際社会による紛争後の国づくりや復興支援が増加し、長期の社会開発との関わりの重要性が高まっている。本稿は、紛争後の援助がコミュニティの社会開発に与える影響を分析し、コミュニティでのより効果的な援助の方策を探ることが目的である。前半部では、紛争後の援助全般の特性について分析し、ドナー主導体制、プロジェクト主義、短期の援助サイクル、資金の継続性の欠如など、社会開発過程を阻害する要因を明らかにした。特にこれらの問題は、正当な国家が存在せず、ドナーが本格的な援助を行わない「移行期」に顕著である。後半部では、東ティモールの事例を取り上げ、特に「移行期」の援助がコミュニティの社会開発に及ぼす影響を考察した。現地調査等の分析を通して、移行期の援助の特性が、コミュニティにおいて、当事者意識、ローカルガバナンス、コミュニティ結束、市民社会組織の成長等の点で、コミュニティの社会開発に弊害をもたらしている状況を指摘した。今後、援助の効果を上げ、持続的な社会開発を実現するためには、プロジェクトベースの援助体制の限界と弊害を認識しながら、コミュニティや政策との関連に配慮し、その効果を国や他地域、他プロジェクト等のネットワークに繋げる援助の実践が求められている。
- 国際ボランティア学会の論文
- 2006-02-28