女性に対する暴力としての人身売買 : 国連の2つのアプローチと日本政府による法改定、およびその問題点(<特集>ボランティアとジェンダー)
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概要
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1970年代の終わりから1980年代にかけて、アジアにおける移住労働者の主要な受入国となった日本では、女性の移住労働者をターゲットとした性産業への人身売買の被害が続出してきたものの、日本政府は2004年に取り組みを開始するまで、何ら対策をとってこなかった。むしろ人身売買の被害者は、「不法滞在者」、「不法就労者」として強制送還の対象とされてきたために、被害者の保護はおろか、真相究明が困難な状態が続いてきた。国連は世界的に盛り上がる女性運動影響も受け、1960年代から1990年代にかけて、女性の人権、女性に対する暴力という視点から、主には女性の移住労働者に対して行われている深刻な人身売買の問題に取り組んできた。そのいっぽう、1990年代に入ると、人身売買が組織犯罪対策、「反テロ」対策というあらたな視点をもって位置づけられるようにもなった。現在では、女性に対する暴力という視点よりも、むしろ組織犯罪対策・「反テロ」対策の視点に立った取り組みの方が強化されつつある。2004年に着手された日本政府による人身売買政策もまた、同様な視点から行われている。国際組織犯罪禁止条約への批准を前提に行われていている一連の取り組みは、加害者処罰に重点がおかれ、被害者保護の視点は非常に弱い。5年後の見直しのときには、女性に対する暴力という視点から、被害者保護法を制定する必要がある。
- 国際ボランティア学会の論文
- 2006-02-28