教育の「公共性」をめぐる一考察 : 公共圏とコミュニティ・スクール
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概要
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1980年代後半以降、教育における「公共性」をめぐる議論が活発になっている。しかし論者によって「公共性」の意味は異っている。本稿では、これらの意味を整理したうえで、「公共性」の問題を「公共圏」の形骸化に関連づけて論じる視点を提示する。現在、「公共性」をめぐる議論が活発になっている背景には、公共圏における中間団体が、国家や市場の操作対象となっている状況がある。それは、教育をめぐる公論および生活世界としての教育的領域の形骸化を引き起こす。ではどうすればいいのだろうか。ハーバーマスの「コミュニケーション的行為の理論」は、理論上の対抗策を提示するものの、実践に応用できるわけではない。よって、本稿では「学校」を公共圏における中間団体として形成する試みに注目し、ニューヨーク市におけるコミュニティ・スクールの実践例を参照する。コミュニティ・スクールは、チームによる運営やボランティアによる継続的な活動によって成り立つ学校である。教育における「公共性」は、公共圏における中間団体が、形骸化に対抗し、再生する過程を通じて獲得されるものなのではないだろうか。
- 2000-10-31