海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察 : グローバル人材としての潜在可能性に関する研究
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概要
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日本は島国であるが故に、多(他)国籍の人々との出会い、異文化との交流を経験する機会が少ない。それをカバーするために、社員に語学を積極的に学ばせたり、社内の公用語は英語にする、といった努力を日本の企業もようやく始めだしたが、これだけでは昨今の変化のスピードに追いつけないであろう。それならば、既に海外経験を通して異文化適応能力と語学能力を身に付けて日本に帰国している人をもっと活用すれば、日本企業のグローバル化がもっと加速され、変化の波に乗り遅れずに済むのではないだろうか、と考えたのが本稿の出発点である。本稿では、異国での滞在経験を有する海外帯同配偶者の実情ならびにその人たちの異文化適応能力や語学能力を検証し、「グローバル人材」として活躍できる潜在性を探ることにした。海外帯同配偶者の異文化適応能力、語学能力、就業など、様々な切り口からの分析で明らかになったのは、海外帯同配偶者は、「グローバル人材」として活躍できる可能性が十分にある、ということである。また、滞在国で積極的に活動していた人ほど、異文化適応能力や語学能力が高いことも分かった。海外帯同中の異文化適応や語学習得などに対するモチベーションを上げるには、海外派遣勤務者の所属する企業からの何らかのサポートに加え、海外帯同配偶者自身も、海外での滞在経験を通して異文化適応能力や語学能力に磨きを掛けることが「グローバル人材」として活躍できる可能性を高めることにもつながる、ということを自覚することも大事なポイントである。日本企業は、多様な滞在国、多様な経験、多様な年代の集団である海外帯同配偶者の存在や、その個性豊かな人たちの中には異文化適応能力や語学能力を有した「多様性人材」がいるということを、いち早く認知するべきであろう。また、グローバル化を進めようとしている日本企業で、「多様性人材」が十分に能力を発揮し、活躍できるような仕組みや環境を整えることも大事であろう。日本企業のグローバル化には、海外経験を通して、異文化適応能力や語学能力を身に付けて帰国している新たな「多様性人材」を積極的に活用すべきである。
- 2011-09-30