中国における企業の公式組織化に関する研究 : 牡丹江市の建設業のケース
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概要
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本研究は、現代の中国が自由市場経済に移行して、様々な企業形態が出現し、外資系企業の進出も急速に展開し、中国経済を構成している一部の企業群が先進国の自由主義経済体制の企業形態と同様の方向に向かいつつあるとみられる中で、各企業のマネジメント・システムの発展の方向性はいかなる道を辿るのであろうか、という素朴な疑問から出発している。一方、先進国のグローバルに展開している企業では、その「中核的な」組織構造あるいはマネジメント・システムが、同様の内容あるいは在り方に収斂してきているのではないか、という認識を持っており、したがって中国も今後同様の道筋を辿る可能性があるのではないか、ということを明らかにしたい、というのが問題意識である。さらに、この根底には、近代化、合理化、官僚制化は同意義としてとらえ、組織あるいはマネジメント・システムの中核的な部分においては同じ道筋を辿るという認識を明らかにしたいということである。本研究目的は、中国の建設業(牡丹江市)に焦点を絞って、建設業の規模別(資質等級別)そして職種別の相違が、公式組織化の程度に影響を及ぼすことを明らかにすることにある。そこで研究デザインとして、まず先行研究や理論研究から企業の規模と仕事内容の相違と公式組織化の程度の関係を仮説として導き出し、それを検証する手続きを採用した。研究方法は、公式組織化としての組織構造に対する従業員の意識をアンケート調査し、その分析結果に基づいてヒアリング調査をし、総合的に分析した。仮説1:企業規模(一級・二級・三級)の相違は、公式組織化の程度と正比例の関係にある。つまり、規模が大きくなる程公式組織化の程度が高くなる。仮説2:課業(ホワイト・カラー・ブルー・カラー)の不確実性は、公式組織化の程度と反比例の関係にある。つまり、不確実性が高くなる程公式組織化の程度は低くなる。(ホワイトカラー=高い不確実性、ブルーカラー=低い不確実性)分析結果としては、仮説1は、検証された。つまり、企業規模が大きくなる程公式組織化の程度は高くなる、と従業員に知覚された。第2の仮説も、検証された。つまり、職種別の確実性の程度が高くなる程公式組織化の程度は高くなる、と知覚された。以上の結論から推論されることは、企業経営のグローバル化が進んできている中、中国においても先進国の諸研究・諸理論(公式組織化・官僚制化・近代化・合理化)が一致する方向にあると考えられる。
- 2011-04-30