他者との出会い(他者を知る)(少子・高齢化社会における犯罪・非行対策-持続可能な刑事政策を目指して)
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概要
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本稿は,著者のこれまでの人生で体験から学んだことや犯罪学者としての関心の根本にあるものである.それは,他人のことを知れば知るほど,その人に対して,普通に考えて許容されないような行動をとることにためらいが生じるということである.人としての他者との出会いは,私たちを人間たらしめている必要不可欠な条件である.刑罰は,害悪であること意図して作られた害悪である.それは,意図的に人に苦痛を与えるものである.人々がお互いに親密な関係を保っているような社会の中では,お互いを人として見ているので,(他者に)苦痛を与えることにはためらいが生じる.仲裁や修復的司法といったものは,その意味でも,人々に(刑罰)よりも,もう少しましな選択肢を私たちに提供することができるのではないだろうか.私たちが暮らす社会では,他者と出会う(他者を知る)機会を奪う様々なものが存在する.国家,民族,文化といったものは社会的距離を生み,私たちの視野を曇らせる.社会的あるいは地理的な移動性も同じように私たちの視野を曇らせる.犯罪と呼ばれるものは,私たちの社会の中に深く埋め込まれている.おそらく,私たちが暮らす社会において最も重要な犯罪防止は,物質的な繁栄よりも社会全体をケアすることが優先されるようなものではないだろうか.そして,もし,将来,警察や刑事司法の専門家といった外部の力に頼らず,お互いを人間として尊重し合うような,お互いさま的なコントロールを形成するような民主的でオープンな社会を望むのであれば,その答えは,そんなに遠くない過去にあるのかもしれない.
- 2011-10-31