光覚消失からステロイドパルス療法で視力が改善した視神経炎の1例
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概要
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光覚が完全に消失した視神経炎症例は視力予後が不良とされている。今回、数日間光覚が完全に消失後、ステロイドパルス療法が奏功し劇的な視力回復を得た視神経炎の1例を経験したので報告する。症例は40歳男性。右眼視力低下と右眼窩部痛を自覚したが放置し、その8日後に光覚が完全消失、10日後に当センター眼科を初診した。初診時、右眼は光覚がなく、相対的入力瞳孔反射異常を認めた。右眼視神経乳頭は浮腫状で、網膜静脈は拡張蛇行し、網膜には斑状出血が散在していた。蛍光眼底造影検査では視神経乳頭に過蛍光を認めたが、充盈遅延はなかった。頭部MRIにて右球後部から視交叉レベルにまで連続して視神経腫大とT2延長像を認め、右前頭葉白質に小さな高信号域を認めた。原因が同定されず、右眼特発性視神経炎と診断し、翌日よりステロイドパルス療法を施行した。治療開始後5日目にも右眼の光覚はみられず、外来で経過観察を行ったところ、約1か月目には矯正視力 (0.1)まで改善を認めたため再度ステロイドパルス療法を施行したところ、2か月目に右眼矯正視力は(1.0)まで改善した。中心フリッカー値も2回のステロイドパルス後は12Hzと低値だったが、その後徐々に改善し、治療開始後5か月目には31 Hzまで改善した。しかし、8ヶ月目に右眼視力が(0.6)と低下し、中心フリッカー値も24 Hzと軽度低下を認めたため、再度頭部MRIを施行したところ、右眼視神経は視交叉までほぼ全長に渡ってT2延長を呈していた。また、テント下に斑状のT2延長域を認めており、多発性硬化症が強く疑われた。光覚消失後数日経過した視神経炎の症例であっても、ステロイドパルス療法により視力改善の可能性があることが示唆された。本症例のように特発性と考えている症例で全身症状がなくてもMRIの再検査が重要であると考えられた。
- 2012-01-31
著者
-
八代 成子
国立国際医療センター
-
武田 憲夫
国立国際医療センター戸山病院眼科
-
武田 憲夫
国立国際医療研究センター病院眼科
-
中村 洋介
国立国際医療研究センター病院眼科
-
芳田 奈津代
国立国際医療研究センター病院眼科
-
八代 成子
国立国際医療研究センター病院眼科
-
菅波 由花
東京女子医科大学病院眼科
-
菅波 由花/八代
東京女子医科大学医学部眼科学;国立国際医療研究センター病院眼科/国立国際医療研究センター病院眼科/国立国際医療研究センター病院眼科/国立国際医療研究センター病院眼科/国立国際医療研究センター病院眼科
-
八代 成子
国立国際医療研究センター眼科
-
中村 洋介
国立国際医療研究センター眼科
-
菅波 由花
東京女子医科大学医学部眼科学;国立国際医療研究センター病院眼科
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